痴呆の症状と対応


ここでは、痴呆患者さんに現れやすい症状と、 その対応について書きます。 対応については、私が今までに経験してきたことと、 一般論をもとに書いています。 同じように見える症状を抱えていても、 その人その人で対応法も変わってくるはずですので、 鵜呑みにしないようにお願いします。
「こう書いてあったからしたら、よけいにひどくなった」 といわれても、ちょっぴり困ります。 でも、そんなことがあれば、メールで教えて下さい。 私も勉強になりますから。

もくじ

ものわすれ・見当識障害
食事に関すること
排泄に関すること
お風呂嫌い
夜間不眠
徘徊
妄想・幻覚
異食
不潔行為
収集癖
暴力
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物忘れ・見当識障害

痴呆の中核症状は記憶障害である。特に、新しいことを覚える能力に、 著しい低下が認められる。 見当識とは、今現在自分が置かれている環境を正しく理解する能力であり、 見当識障害とは、自分が誰か、ここは何処か、今は何年何月か、等が 解らなくなる状態をさす。それは、人物誤認(夫を父親と間違える等)や、 自宅にいるのに、どこかへかえろうと家をでるなどの症状の原因にもなる。

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食事に関すること

1 食べたことを忘れ、空腹感を訴える
記憶障害の他に、痴呆により満腹感が欠如している事が原因にあげられる。 満腹感がないため、「食べた」と一方的に説明しても信用せず、 「家の嫁は飯も食わせんで・・・・」と、 嫁に対する被害妄想へ発展することもある。 欲求のままに食べていては、エネルギー過剰になるのはもちろんだが 下痢や嘔吐などの症状が出るまで食べ続けてしまうこともあり、 その調整が必要となる。
2 食事を上手に食べられない 食事で遊んでしまう
痴呆により、食事の仕方を忘れてしまうことがある。 また、食べ物を食べ物と認識してこそ食事につながるのであって、 その認識力が障害された場合には食事で遊んでしまうこともある。 食事を手づかみで食べてしまうのは、箸やすぷーんの使用方を忘れたときや、 食物に関する執着心が強いときに現れやすい。 しかし、手の軽度麻痺がおこっていると、上手に食べることが出来ず、 いらいらして手づかみすることもある。 また、入れ歯があっているか、ご飯はかたすぎないか、 肉はかみ切れるかなどもチェックする必要がある。 安易に「呆けが進んで」と解釈しないようにすることが必要。
3 食事を食べない
食事が出来ないのではなく、しないときの原因としてあげられるのは
  1. ストレスや不満などを表出する手段として拒否している。
  2. 体調が悪い。便秘をしている。口の中や、のどなどに痛みがある。
  3. その食べ物が嫌いである。または、食べられない。
  4. 「さっき食べたばかりだ」と、思っている。空腹感がない。
  5. 何か、妄想がある。 ・・・毒が入っている。食べては行けないと言われている、等。
  6. うつ状態にある。
等である。

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排泄に関すること

私達が、普段尿意、便意を感じてトイレで用を足すことは、 たくさんの課程が複雑に絡んだ、高度なことであり、
1 尿意便意を感じる。
2 トイレまで、排泄を我慢する。
3 トイレを見つけ、トイレに行ける。
4 トイレの使い方が解る。
5 パンツ等の上げ下げができる。
6 後始末ができる。
等の能力のうち一つでもかけると、排泄に介助が必要となってしまう。

1 失禁
失禁とは不随意的に尿・便がでることを指すが、 失禁しているからといって、必ずしも尿意がないわけではない。 痴呆患者の場合は、トイレの場所が解らなかったり、 上手く尿意を伝えられないために失禁してしまうケースも多い。 また、睡眠薬を飲んでいる場合には、夜間は尿意を感じなかったり、 尿意はあっても、動けないと言う状態になってしまうことがある。 ここでも、原因の追究と、その原因に応じた対処法が必要となる。

おむつのデメリット
おむつに依存してしまい、排泄自立に無関心となる。 現在ある尿意を鈍感にしてしまうことにつながる。
老人の自尊心を傷つける。心理的ショックが大きい。
床ずれや、尿路感染(膀胱炎など)になりやすい。
動きにくい。
経済的負担がある。

2 トイレ以外で排泄してしまう
トイレを認識できないこと、トイレに行くまで我慢できないこと等が 原因となっている場合が多い。

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お風呂嫌い

痴呆患者には、お風呂をいやがる人が多い。 以前は、清潔好きな方であってもである。 その原因としては
1 裸になるのが怖い。水や浴槽が怖い。
2 何をされるのか十分理解できず、抵抗する。
3 衣類の中に大事な物を隠している。 または、服自身が大切で脱ぎたくない。
4 お風呂に対し何らかの妄想がある。
5 おっくうである。無気力
等が考えられる。

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夜間不眠

老人は一般的に眠りが浅い傾向がある。 痴呆性老人では、それに妄想や幻覚、せん妄が加わり、 夜間不眠となることが多い。 また、痴呆により昼間の活動性が低下すること、 トイレや空腹感、のどが渇くなどの理由で 途中目覚めることが多いのも不眠の原因である。 夜眠れないと、昼間眠くなって昼寝をしてしまうため、 昼夜逆転となってしまうことがある。
不眠が毎晩でなく特に問題行動のない場合には、 さほど心配することはない。 しかし、不眠が続くと、本人の体力消耗が著しく、 精神的にも不安定となる。 夜眠れなくとも、昼間の睡眠で十分休息がとれている場合、 施設等では、柔軟に対応することも多い。 しかし、家庭で介護している場合には、 昼夜逆転は非常に大きいストレスとなる。

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徘徊

具体的な目的を持たず、しかし精神的に迫られて歩き続ける行動を指す。 とはいえ、患者に聞いてみると「家に帰る」「・・へ行く」 などの目的がある場合も多い。 ここで問題となるのは、
家から出ていってしまい、一人で戻れなくなる。
信号無視や飛び出しから、事故に遭いやすい。
人の家や、公共の施設に入り込んでしまう。
目的を果たせないという患者のストレス
等であろう。

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妄想・幻覚

どちらも、精神症状であり、向精神薬使用の適応となる。
1 妄想
「病的な状態から生じた判断の誤り。誤った観念や確信は、 訂正不能」といわれる。
妄想にはいろいろな種類があり、多く見られるのは 物とられ妄想や、その他の被害妄想である。 その他、自分の配偶者が浮気しているのではないかという 嫉妬妄想なども見られる。 2 幻覚
実際にはないものを感じることをいう。 痴呆症の場合、全く何もないのではなくて、 ちょっとした刺激が誤って認識されることが多い。 起こりやすい状況としては、天気の悪い時や薄暗い部屋の中、 夜中や昼寝のあと、視力・聴力に障害があること等がある。

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異食

判断力・認識力の低下により、 空腹時に食べ物以外のものを食べてしまう。 口に入るものは、全て異食の対象となるため、 時にイレウス(腸につまってしまう)となったり、 中毒のため胃洗浄を必要としたり、 時に死の危険もある。

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不潔行為

不潔行為は、患者にとっては意味ある行為であることが多い。そのため、その原因を知った上で、 その行為を良い方向へ修正していくことが必要になる。
行動と考えられる主な原因・対応
おむつを外してしまう
おむつが汚れている。 ごわごわするなど心地が悪い。 トイレに行きたい
対応おむつを交換する。トイレへ誘導する。 できるだけ違和感のない本人にあったおむつを選ぶ。 やむを得ない場合つなぎ服や、ロンパースなどの使用。
おむつの中に手を入れる
おむつが汚れている。またはむれている。 排便が出そうで出ない。 おむつかぶれ、床ずれその他皮膚疾患がある。
対応おむつの交換をまめに行う。 排便状態の観察の対応(浣腸など)。 おむつかぶれや床ずれなどがあれば、皮膚科薬の使用。つなぎ服の使用
汚れたものをしまい込む
汚れたものと綺麗なものの区別が付かない。 汚してしまったことが恥ずかしい。
対応特になにも言わずに片づける。 または綺麗なものと交換する。 持って離さないようなら、洗濯場まで一緒に行って、 洗濯機の中に入れてもらうか洗濯させる。
便で遊んでしまう。便を手につける。
おむつ内の違和感から手を入れると付いてしまう。便を便と認識できない。 手についた便を拭こうとして辺りになすってしまう。 対応排便状態をコントロールする ・・便秘して下剤を与えるのは、不潔行為を招く 可能性が高いので、毎日朝食後などにトイレ誘導し、 定期的にトイレで出るようにするのが望ましい。 つなぎ服などの使用。(やむを得ないとき)

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収集癖

懐の中や自分の部屋などの決まった場所に、 自分の興味ある物をたくさん集めてくる。 その「興味のあるもの」とはハンカチであったり、 石や花であったり、箱や空き缶であったり、 その患者、その時の状態によって異なる。 収集は、自分のもの、人のものの区別無く行われることが多いので、 時に「盗んだ」などとトラブルになることもある。

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暴力

痴呆患者にみられる暴力には、 口論など喧嘩によってみられる暴力と、 妄想が原因となる暴力、 そして突発的な暴力がある。 痴呆によって性格変化が起こり、 怒りやすくなる人もいる。 特に、言葉に障害を持つ老人の場合には、 言葉で表せないイライラを行為で表すために 暴力行為が出ることもあり、 それらの暴力はこちらの対応で減らすことが出来る。 しかし、突発的な暴力は、原因の特定が困難で 対応が難しい。